8ヶ国語を話すマルチリンガルの個人ブログ

いつもやや前のめりで。『LEAN IN』(リーン・イン)

“Lean In”との出会い

ニューヨーク・メロン銀行でヴァイス・プレジデントとして働いていた時、CEOの部屋に行くと多くの本が所狭しと積まれていました。中にはかなり分厚い本もあったのですが、毎週レパートリーがガラリと変わっていたのです。手にとって眺めていると”You can bring that home, I’ve already read it.”(持って帰っていいよ、もう読んだから)と言います。当時の私はほとんど本を読まなかったので(洋書ならなおさら)10回に9回は丁重にお断りしつつ、”How about setting-up a bookshelf in canteen? You can get rid of all these books from this room, don’t you think?”(ブレイクルームに「社長文庫」っていう本棚を置いたらいかがですか?この部屋も随分スッキリしますよ、きっと)と提案してみたら、数ヶ月後にドッサリ社長室から本が移動していました。

そんな「社長文庫」の蔵書はほとんどが金融・経営・リーダーシップに関する本でしたが、ある日この”LEAN IN”が6冊ほど置かれていたのです。当時はまだシェリル・サンドバーグのことを知らなかった私でしたが、同じ本が何冊も置いてあるということは「CEOが私たち社員に読んで欲しいのだな」と思い、手に取りました。これが、私とこの本との出会いです。

“Lean In”とはつまりどういうことなのか

世界で100万人以上の人が読み、700万人以上の人が聞いたスピーチは、働く女性にのみ向けられたメッセージだと思われがちですが、男女を問わず「働く全て」の人たちに読んで(聴いて)もらいたい。日本の人は女性に限らず男性でもキャリアに対して、ちょっと自信がなかったり、現状維持を最優先に考える人が多いからです。

この記事では書評というよりは、”Lean In”を3年前から英語読書会で使用し、その後も講演やスピーチ講座を通して、合計300名近くの方と一緒にこのテーマについてディスカッションして来て気づいた学びを、言葉に残しておきたいと思います。

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序文
序章
1. 怖がらなければ何ができる?
2. 同じテーブルに着く
3. できる女は嫌われる
4. 梯子ではなくジャングルジム
5. メンターになってくれませんか?
6. 本音のコミュニケーション
7. 辞めなければならないときまで辞めないで
8. パートナーをほんとうのパートナーに
9. スーパーママ神話
10. 声を上げよう
11. ともに力を
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シェリル・サンドバーグ氏のメッセージはとてもシンプルです。
1. “Believe in yourself, and lean in” (恐れずに自分自身を信じて前のめりで進むこと)
日本では「出る杭は打たれ」るという言葉がありますが、出過ぎた杭は打たれません。成功する人は周囲からやっかまれ、嫌われますが、そんな人の声には耳を傾けないことです。
2. “Don’t leave before you leave” (キャリアのブレーキを早々と踏まないこと)
結婚や出産といったライフイベントは女性にとってキャリアブレーキとなることがあります。しかし、結婚や出産をする前から早々とブレーキを踏む必要はありません。決断が必要なその日まで、アクセル全開で進むのです。
3. “Make your partner a real partner” (パートナーを真のパートナーにすること)
キャリアを持つ女性にとって必要なのは、真のパートナーとしての夫です。育児や家事を公平に分担できるだけでなく、時には適切なキャリアアドバイザーとしてのパートナーがいると、女性は家庭だけでなく職場でも活躍できるようになるのです。

キャリアアップの道は真っ直ぐにあらず

彼女は本著の中で「キャリアはマラソン、梯子*ではなくジャングルジム。一本道を上る・下りる・とどまるかという選択肢ではなく、回り道をしながらトップまで登ってもいい」と書いています。若い時は早く社会に出たい、認められたい、活躍したい、と焦るものですが、私たち世代は70歳定年時代へまっしぐらに進んでいます。私は出産はしたことがありませんが、2008年リーマン・ショックの影響を強く受けた金融業界にいたので、その後の3年間はまるで立ち止まっているように感じました。しかし、その”停滞していた”3年間の学びは次に生かされ、2012年には希望する職場への転職ができました。

*”Climb the ladder”(梯子を登る)とは、日本語で「出世の階段を上る」と同じ意味で使われる表現。

“Lean all the way in!”

原著の最後に彼女はこう締めくくります。
“I hope my children both end up exactly where they want to be. And when they find where their true passions lie, I hope they lean in – all the way.”
(子供たちには、望むことをしてほしい。自分の本当にしたいことを見つけたら、大きく一歩を踏み出しーそして進みつづけてほしい、いつまでも)

ここの”my children”は、彼女の子供たちに限らず「次世代」を意味していると考えます。彼女はバーナード大学卒業式のスピーチで「あなたたちに世界を変えてほしい、私たち世代からバトンを受け継いで」と話しているからです。つまり、20代〜30代の若者世代へ書いたメッセージなのです。


シェリル氏も著書の中で「フェイスブックCOOとなった今でも、批判されて落ち込むことだってある」と自身のエピソードを紹介していますが、誰にだってちょっと自信喪失する時があります。いつもアクセル全開踏みっぱなしということもありません。私はそんな時、彼女のスピーチを見ることにしています。彼女がバーナード大学で話したスピーチはいつも「大きな勇気をもらえる」から。

シェリル・サンドバーグ氏の本はとても平易でわかりやすい言葉で書かれています。洋書は少しハードル高いな、という方は和訳本を参考にしながら、ぜひ原著で読んでみてください。

おまけ:私の”LEAN IN”

マルチリンガルクラブの講座に何度か来られた方であれば、私のシェリル好きは周知のことと思います。自身が開催している英語講座をベースに書いた『たった2時間で目覚める英語』では、彼女のスピーチを使った講座風景を書き起こししました。執筆中、彼女のスピーチを和訳している出版社に引用について打診したところ「OK」。しかし発売直前になって、引用部分が多すぎると「待った」がかかってしまいました。このままでは内容を大幅に書き直すか、出版差し止めとなってしまいます。

そこで私はシェリルが立ち上げたLeanin.Orgに直接連絡しました。私がいかにこの本を読んで変わったか、自身の活動を通して日本の人たちがどう変わろうとしているかを伝え、シェリルのメッセージをぜひ自著で紹介したいと交渉したのです。すると数日後に「もちろんOK」と返信をいただけたのです。

いつもだったら「やっぱりダメかな」「誰かに迷惑がかかっちゃうといけないな」とやる前から諦めていたかもしれません。しかしめげずに直接アプローチしたことにより、大好きなシェリルのメッセージを自著の中で引用することができました。まさに、“Think BIG, and don’t give up!”(ものごとを大きく捉え、あきらめないで)

今月から毎月、彼女のスピーチを使った英語スピーチ実践講座を再開しました。英語のブラッシュアップをしたい方、英語で話す力をアップさせたい方、プレゼンテーションスキルをアップしたい方、シェリルのメッセージから学びを得たい方などのご参加をお待ちしています。

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